変調の基礎(AM / FM / PSK)

情報を波のどこに乗せるか — 振幅・周波数・位相、3つの選択肢を見比べる

変調方式:
変調度 m 0.80
情報信号の周波数 1.0 Hz
搬送波は8Hzに簡略化(実際のL1は1.5GHz)。上段=乗せたい情報 / 中段=搬送波 / 下段=変調後の電波
3つの変調 — どこに情報を隠すか

搬送波 y = A sin(2πft + φ) には、いじれる場所が3つしかありません。振幅AをいじるのがAM、周波数fがFM、位相φがPM/PSKです。波の基礎で動かした3つのスライダーが、そのまま3つの変調方式に対応しています。

AMは波の「輪郭(包絡線)」に情報が現れるので受信回路が簡単(鉱石ラジオはダイオード1本)。ただし雑音も振幅に乗るため雑音に弱い。変調度を1以上にすると包絡線が潰れて歪みます(スライダーで体験できます)。

FMは振幅が常に一定で、情報は波の密度(周波数)に。振幅の雑音を無視できるため音質が良く、FMラジオや昔のアナログTV音声に使われました。そのかわり帯域を広く使います。

PSKはデジタル: ビットに応じて位相を切り替えます。BPSKは0°/180°の2値で1ビット/シンボル。波形をよく見ると、ビット境界で波が「ぷつっ」と反転しています。

なぜGNSSはPSK(BPSK)なのか

(1) 振幅が一定: 衛星の送信アンプは飽和領域で動かすと最も効率が良く、振幅に情報がないBPSKは電力効率の面で理想的。太陽電池で動く衛星には死活問題です。

(2) 位相=時刻: GNSSの本質は到達時刻の測定。位相に情報を乗せる方式は、そのまま時刻の物差しとしても働きます。搬送波位相測位(RTK)が可能なのもこの延長。

(3) 拡散符号と相性が良い: PRNコードの±1を掛けることがそのままBPSK変調になる(信号の構造のとおり)。

発展形として、2ビット/シンボルのQPSK(L5はI/Q2チャネルでこの形)、位相反転をさらに副搬送波で刻むBOC変調(L1C・Galileo E1)などがあります。

変調と帯域幅 — 情報を速く送るほど電波は太る

変調された電波は、搬送波の周波数を中心に「側波帯」という広がりを持ちます。AMなら情報信号の2倍の幅、FMはカーソンの法則でおよそ 2(Δf + fm)、デジタルではシンボルレートにほぼ比例します。速く情報を送るほど、広い帯域が必要 — これが周波数が貴重な資源である理由です。

GNSSのC/Aコードが約2MHz、10倍速いL5コードが約20MHzの帯域を占めるのも同じ理屈です(周波数帯マップで幅を見比べてみてください)。