地上系電波(eLoran 等)

衛星ではなく地上の送信局から。強力な長波で、妨害に強く時刻配信のバックアップにも

アイデア — 上ではなく「地上」から放送する

GNSSの弱さは「はるか宇宙から届く微弱な信号」であることに由来します。ならば逆に、地上の大電力送信局から強い電波を放送すればよい——これが地上系PNTの発想です。代表格が eLoran(enhanced Loran、拡張ロラン)。軍用のLoran-Cを現代化したもので、約100kHzの長波を使います。

長波はとても低い周波数なので、遠くまで届き、地面や建物に回り込み、GNSSが苦手な場所にも入り込みます。送信出力も桁違いに大きいので、妨害でかき消すのが難しいのが最大の魅力です。

なぜGNSSの相棒に向くのか

妨害に強い

高出力+低周波。GNSSとは物理がまるで違うので、両方を同時に潰すのは難しい。

独立している

衛星に一切依存しない別系統。宇宙天気や衛星障害の影響を受けない。

時刻も配れる

送信局は原子時計で同期。ns級の時刻・周波数を広域に配信でき、時刻同期のバックアップになる。

広いカバー

1局で数百kmをカバー。少ない局数で国土を覆える。

位置精度はおよそ10〜20m級で、GNSSの数mには及びません。しかし「妨害されにくい独立系」という価値から、重要インフラのPNTバックボーンとして各国が検討・一部運用しています(英国の試験、韓国の整備など)。

ほかの地上系

標準電波(JJY 等)

長波の標準時放送。位置は測れないが正確な時刻を広域配信。電波時計でおなじみ。

放送・通信網の同期信号

デジタル放送や通信網は自らも時刻同期して動く。地上の時刻源として使える場面も。

携帯ネットワーク測位

基地局のセルIDや到達時間差での測位も地上系。5Gでは測位機能が標準化(詳しくは 信号機会測位)。

疑似衛星(シュードライト)

地上に置いた“GPS送信機”。空港や屋内など局所エリアをGNSS互換信号で補強する。

GNSS と eLoran のちがい

項目GNSSeLoran
発信源宇宙(衛星)地上(送信局)
周波数L帯(約1.2〜1.6GHz)長波(約100kHz)
信号強度非常に弱い非常に強い
位置精度数 m約10〜20 m
時刻配信○(ns級可)
妨害耐性弱い強い
屋内・地下△(届きやすいが完全ではない)

短所は、送信局という地上インフラの整備・維持が必要なこと、精度がGNSSに劣ること、地形や電波環境の影響を受けること。だからGNSSを置き換えるより、独立したバックアップとして併用する構図が現実的です。全体像は GNSSの代替(概要) へ。