GNSS衛星信号シミュレーター

GPS+QZSS(みちびき)の電波を1つの受信点で受ける。周波数帯・衛星数・ビルの遮蔽と反射の影響を観察

直接波(LOS) 反射波(マルチパス) L6補強データ 遮断
断面図・縮尺はデフォルメ(実際の衛星は高度約2〜3.6万km)
周波数帯:
シナリオ:

受信状況

    コントロール

    GPS衛星数5 機
    QZSS衛星数1 機
    ビルの数2 棟
    ビルの高さ70 m
    周波数帯(L1 / L2 / L5 / L6)の違い
    帯域中心周波数主な役割送信衛星
    L11575.42 MHz基本の測位信号(C/Aコード)。すべての受信機が対応GPS全機・QZSS
    L21227.60 MHz2周波目。L1と組み合わせて電離層誤差を補正(L2C)新しめのGPS・QZSS
    L51176.45 MHz広帯域・高精度。マルチパスに強い次世代信号Block IIF以降のGPS・QZSS
    L61278.75 MHzcm級補強情報(CLAS)の配信。測距用ではないQZSSのみ

    なぜ複数の周波数? 電波は電離層を通ると遅れますが、遅れ方は周波数によって違います。2つの周波数(L1+L2やL1+L5)で同じ衛星を測ると、その差から電離層の遅延そのものを計算して打ち消せます。これが2周波受信機が高精度な最大の理由です。

    L5がマルチパスに強い理由: 測距信号は「チップ」と呼ばれるパルス列で、受信機は直接波と反射波の到達時間差がチップ長より大きければ両者を分離できます。L1 C/Aのチップ長は約293mですが、L5は10倍速い符号を使うため約29m。つまりL5では、29m以上遠回りした反射波は誤差にならず捨てられます。バンドをL1→L5に切り替えて、⚠だった衛星が「反射は分離済み ✓」に変わるのを確認してください。

    注意: 対応衛星はL1が最も多く、L5はまだ一部。バンドを切り替えると「非対応」の衛星が出て、使える衛星数が減るトレードオフも見えます。

    QZSS(みちびき)— 準天頂軌道とL6/CLAS

    QZSSは日本のGNSSで、GPSと互換の信号(L1/L2/L5)を送るほか、独自のL6帯でCLAS(センチメータ級測位補強サービス)の補正データを配信しています。L6は距離を測る信号ではなく「補正情報の放送チャネル」なので、このシミュレーターでもL6選択時は扱いが変わります。

    最大の特徴は準天頂軌道: 8の字軌道で日本のほぼ真上に長時間とどまります。図でもJ01/J02は天頂付近をゆっくり往復し、ビルの谷間でも遮断されにくいことが確認できます。アーバンキャニオンのシナリオでQZSSの数を増減して比べてみてください。

    GNSSの仕組み — 電波の「到達時間」で距離を測る

    GNSS衛星は、自分の位置と正確な時刻を電波に乗せて送信し続けています。受信機は「電波が届くまでの時間 × 光速」で各衛星までの距離(擬似距離)を計算し、複数の衛星からの距離を組み合わせて自分の位置を求めます。光速は約30万km/s — 1マイクロ秒の時間誤差が約300mの距離誤差になる、時間測定のシビアな世界です。

    求めたい未知数は位置の3つ(x, y, z)+受信機の時計誤差の1つ、合計4つ。だから最低4機の衛星が必要です。「衛星不足」シナリオで4機未満にすると「測位不可」になります。

    マルチパスとアーバンキャニオン

    ビルなどに反射した電波(オレンジの経路)は、直接波より長い道のりを通って届きます。受信機は到達時間から距離を計算するため、反射波を掴むと距離を実際より長く見積もってしまい、測位誤差になります。リストの +○m は反射による経路の伸び=誤差の種です。特に危険なのは、直接波が遮断されて反射波だけが届くケース(NLOS)。大きく間違った距離を使ってしまいます。

    高いビルに挟まれた都市の谷間(アーバンキャニオン)では、使える衛星が減り、マルチパスが増えます。対策は: 低仰角の衛星を使わない(仰角マスク)、反射に強いアンテナ(チョークリング)、L5などの広帯域信号、マルチGNSSで衛星数を稼ぐ、RTK/CLASなどの補強 — と多層的です。